B型肝炎

疫学

現在、全世界で20億人以上の人がHBV(B型肝炎ウイルス)に感染していると推定されています。また慢性的にHBV感染している人が約35000人いるとされ、毎年約60万人がHBV感染による病気によって死亡していると推定されます。

 わが国でも110140万人のHBV持続感染者があるとされ、B型急性肝炎による新規推定入院患者は年間1800人程度です。軽症や潜伏感染症例も含めると毎年5000人以上の新規感染者が存在すると推定されています。(厚生労働省ホームページによる)

 B型肝炎の感染経路は、これまで直接に患者の血液や分泌物などに接触する行為とされており、具体的には母から子への垂直感染と、輸血などの医療行為による感染、そして性感染などが考えられてきました。

 このうち母子間の垂直感染については、わが国では母子感染予防事業が1985年から積極的に進められてきていました。これだけ長期間にわたり対策がとられているにも関わらず、比較的最近の統計を見ても、B型急性肝炎の発症率はむしろ緩やかな上昇傾向を示しています。このことから水平感染によって感染が広がっていることが推測されます。

 2002年には佐賀県の保育所でB型肝炎の集団感染事例が報告されました。この事例を調査した佐賀県は、従来知見と異なり「日常生活の中でも感染が起こり得ることを確認」したとしています。汗や唾液によるB型肝炎の水平感染が起こり得ることは動物実験でも実証されています。家庭内、あるいは保育園での生活における水平感染にも目を向ける必要があることが、佐賀県で起きた事例を通じて認識されるようになってきました。

B型肝炎ワクチン

 これまでわが国で行われてきたB型肝炎母子感染防止事業は、HBs抗原陽性の妊婦から出生する児に対してのみ限定対象にしてきました。(セレクティブワクチネーション)

 これに対し、WHOは、B型肝炎ワクチン接種についてユニバーサルワクチネーションの立場を明らかにしています。これは、病気や感染リスクの有無にかかわらず全員にワクチンを接種する考え方です。WHO1997年に出生直後の小児に対してユニバーサルワクチネーションを実施するよう勧告しており、2011年にはWHO加盟国193カ国中180カ国で開始されております。

 現在のB型肝炎ワクチンは非常に優秀であり、乳児に3回接種すればほぼ生涯を通じて免疫がつくとされています。一方、HBV乳幼児期に感染すると慢性化してしまうことが多く、将来、肝硬変、肝がんに移行する恐れもあり、さらに、水平感染リスクがあることを考えれば、早期乳児期にワクチンを投与すべきである。というのが世界に共通する考えからです。

 B型肝炎ワクチンは、生後2か月から開始、4週後に2回目、1回目から56か月後の3回目を接種して終了です。